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1年で1日しか歌われない歌 (その2)

と、まぁー前のブログに書いたように、ネズミがオルガンをかじったことから「きよしこの夜」という歌が誕生した訳です。

しかし、このお話、面白いのだけど残念ながら「都市伝説」に近い。
200年前のクリスマスのイブにギターの伴奏で初めて披露されたというのは真実。オルガンの調子が悪かったというのも真実。ふいごがネズミにかじられて鳴らなかったというのは怪しいらしい。

実際はというと、オルガンの調子は悪かったが音が鳴らないというほどではなかったようだ。ミサは行われ、その合間にギター演奏による新曲「きよしこの夜」が演奏されたのだろうと市井の研究家は指摘している。

さて、お話の続きになります。
年が明け、春になると、聖ニコラス教会にオルガンを修理する職人がやってきた。このオルガン修理職人カが、偶然この曲を聴き、「きよしこの夜」のメロディーと歌詞に感動してしまった。モール神父より楽譜の写しをもらいうけた。モール神父はその後引っ越してしまった。というわけで、この「きよしこの夜」は、その小さな村の教会ではしばらく演奏されることはなかった。そんなわけで教会の知らないところで曲が広まり始める。

その楽譜が音楽ファミリーにも伝わった。音楽ファミリー? 時代は遅れるけどサウンドオブミュージックに出てくるトラップファミリーのような家族による合唱旅商人ですかね。トラップファミリーよりも少し前の時代。欧州各地を渡り歩いている「シュトラッサー」と「ライナー」という2つの家族合唱団。シュトラッサー夫妻は一流の手袋職人。毎年ライプツィッヒで開かれる市で手袋を売る時に子供達も連れて行った。四人の子供がとびきり美しい声を持っていた。「きよしこの夜」を教えると、四人とも喜んで覚えた。そして、子供達はよく親の売店や路上で客集めのために歌っていた。

1831年に、シュトラッサー兄弟姉妹が「シュトラッサー カルテット」としてライプツィッヒの祭りに招かれた。歌った曲の中にこの「きよしこの夜」が含まれていた。たまたま、ドイツのドレスデンの音楽出版社がこの歌を聞いていた。これは素晴らしい、ということで、聞きおぼえた通りに書き写し、作者不詳のオーストリアの民謡として出版した。この歌が欧州中に広まっていく。

シュトラッサー家が路端で演奏したのに対して、ライナー家が歌を披露したのはロシア皇帝や英国女王などと高貴の人々。行動範囲は広く、1839年には米国でも公演している。

一方、「きよしこの夜」の元の楽譜は失われてしまった。年月が経つにつれて作詞したモール神父の名前は忘れ去られて行く。作曲者は数十年後に公に知られることになる。ベルリンのプロイセン王立宮廷楽団長は、この曲はハイドンのヨハン・ハイドンが作曲したのではないかと推測していた。ハイドンの資料が多く保管されているザルツブルグの修道院に元の楽譜が保管されているのではないかと思った。そして、修道院に照会した。修道院の合唱長がその修道院の少年合唱団員であったフェリックス少年に調査を命じた。フェリックスの名前はフェリックス・グルーバー。フェリックスは、その曲はお父さんが作曲したものだと告げる。こうして、1854年に「きよしこの夜」の作曲者としてグルーバーが名乗りを上げた。

とは言え、チロル民謡として広まっていたこともあり、世間的には無名の作曲者の名前も揺らいでいく。多くの人は、グルーバーによる作曲を今一つ信じて無かったようだ。これほどまでに世界に広まったメロディーは有名な作曲家、例えば、ハイドンやベートーベン、あるいはモーツァルトなどの手によるものだろうとうすうす思っていた。

このもやもやが払拭されたのは、ほんの20年前のこと。1995年にモールの手書きの原稿が発見された。その原稿には、モールが1816年にオーストリアの巡礼教会に就かれ、そこで作詞し、1818年にグルーバーが作曲したことが記されていた。

2011年には、「きよしこの夜」はオーストリアユネスコの無形文化遺産に登録されている。

記念礼拝堂

さて、現在、きよしこの夜が演奏された教会はどうなっているか?
近くをザルツァハ川が流れている。この川はたびたび氾濫していた。教会は何度か流された。1900~1906年に別の場所に新しい聖ニコラウス教会は移転した。その跡地、旧聖ニコラウス教会があった場所には、1937年に「きよしこの夜」記念礼拝堂が建てられた。

記念礼拝堂(ここをクリックして出てきた大きな写真の上にカーソルを載せて左右に動かすと近隣が見られる)

礼拝堂の中の様子(ここをクリックして出てきた大きな写真の上にカーソルを載せて左右に動かすと内部が見られる)

この礼拝堂では、毎年12月24日17時からのミサでこの1年にこの日しか歌われない「きよしこの夜」が歌われる。

この時間に「きよしこの夜」を歌うために、世界中から人々がやってくる。教会の周りは数千人の人が集う。このミサの模様は毎年インターネットでも生中継されている。今年は、200年という区切りの年、特別なイベント・コンサートが企画されている。例年より盛大になるのは間違いない。なーんちゃってクリスチャンになって現地に飛んでみるのも良いかもね。寒いだろうな。中継を見ながら一緒に歌ってみるかな。部屋の中で温まりながら中継を見よう。日本時間では、24日の深夜25時だ。うーん、夢の中にいる時間帯だな。
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